校長メッセージ

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2020年3月

2020年3月27日 (金)

【第13回】 「この間、今、皆さんに伝えたいこと(その3)」

3月25日の小池都知事の会見をご覧になった方も多いでしょう。

都知事は、新型コロナウィルス感染者の急増について、「感染爆発の重大局面」であるとし、まずは今週末の不要不急の外出を控え、そして3つの「密」、「換気の悪い密閉区間」「多くの人の密集する場所」「近距離での密接した会話」を避けるようにと呼びかけ、神奈川県の黒岩知事も同様の緊急メッセージを出しました。さらには、26日、東京・神奈川・埼玉・千葉・山梨の知事がTV会議で首都圏としての呼びかけに広がり、小池都知事は夜には安倍首相にも面会し、首相は「緊急事態宣言対策会議本部」招集へまで至っています。

自治体の長の呼びかけている”皆さん“というのは、もちろん子供も大人も含まれます。森村学園の生徒である皆さんも、もちろん教職員も、このことを肝に銘じて行動していただきたい内容です。感染は、自分一人の問題ではありません。感染を防ぐ行動をするということは、家族や友達へ、多への思いやりでもあるのです。他人事ではなく、自分事としてとらえることなのです。

さて、第3学期末の臨時休校から春休みに入り、長い休みが続いています。私が皆さんに期待することは、自分で生活をコントロールできるようになることです。中学生、高校生だったら、自分でプランニングできるはずです。森村学園の建学の精神は「独立自営」は「どんな困難な状況でも自分で考えて課題を解決でき、自らの道を切り拓く」というものです。休みなのに外出が難しい、部活動もできない今だからこそ、具体的に出来ることはなんだろうと考えてもらいたいのです。読書でしょうか。家族の手伝いでしょうか。人ごみを避けて静かなところを散歩することを習慣にしてみてもいいかもしれません。森村生の知性と理性に期待しています。

世界的ベストセラーとなった「サピエンス全史」の著者、歴史学者・哲学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏が、新型コロナウィルス”についてTIME誌に寄稿した記事が翻訳されています。

http://web.kawade.co.jp/bungei/3455/

同氏は、この新型コロナウィルスの大流行をグローバル化のせいとすることに警鐘を鳴らし、分離でなく協力が人々を救うのだと呼びかけています。ハラル氏の歴史学者的な視点は、この状況を整理し、客観視する助けになるかもしれません。

Photo_2河出書房新社より

さて、森村学園の新しい1年が間もなく始まります。新入生たちが少しの不安と大きな期待を胸に入学してきます。森村学園は、生徒の皆さんと教職員が力を合わせて、もっともっと良い学校していきたいと思っています。今回の、この予想すらしなかったこの局面は、どんな時でも柔軟に対応できる学校となるために天から与えられた試練の機会と考えています。

みんなで力を合わせて、乗り切りましょう!

中等部・高等部 校長 江川昭夫

2020年3月20日 (金)

【第12回】 「在校生、そして卒業生の皆さんへ」~合言葉を胸に~

3月19日に中等部3年生、20日に高等部3年生の卒業証書授与式が行われました。これで1年間のすべての行事が終了し、学園の1年も終わりました。

今年度も様々な行事や出来事がありました。春の体育祭、夏休みに多くの生徒が参加した海外留学や研修、快晴に恵まれたみずき祭、1月には高等部3年生のセンター試験「出陣式」、そして2月には、年度最後の行事、中等部の合唱コンクールがありました。

合唱コンクールは、1年、2年、3年と学年順に舞台に登場しました。1年生は、舞台に飲まれないよう一生懸命です。2年生は2回目ということで慣れてきて、声も出るようになります。3年生になると、歌に気持ちを乗せられるようになります。そんな皆さんの成長ぶりが私の耳を楽しませてくれました。

開会の辞では、中等部1年の稲岡さんが「私は練習の時、クラスが団結協力しないと良い合唱ができないということを学びました」と。また、閉会の辞では、中等部3年の岸本くんが「合唱コンの練習で、クラスで過ごせた時間は大切な時間でした。もっとみんなでまとまっていたら、もっといい思い出になったと少し後悔しています。だから、1、2年生は今日経験し、感じたことを活かしてさらに成長して前進できるよう、がんばってください」というスピーチが印象的でした。

生徒の皆さんは、全員が合唱コンクールの経験者です。だから、この二人の言葉、「クラスが団結協力しないと良い合唱ができない」「もっとみんなでまとまっていたら、もっといい思い出になったのに」という言葉の意味が、とても腑に落ちることと思います。

「行事は人をつくる」のです。皆さんはこの1年間、体育祭やみずき祭、合唱コンクールなどの行事や部活動や各種の資格試験や定期試験なども行事と考え、それらを通じて、成果が出たこと、楽しかったこと、いろんな葛藤や課題を感じたこともあったでしょう。そして方法や対策を考え、次の行動を起こす。そんな試行錯誤を積み重ねていくことが大事なのです。それが、みんなで成長するということなのです。どんな状況でも自ら課題を発見し解決していく訓練の場でもあるのです。

さて、新型コロナウィルスの感染が拡大し、学園のスケジュールは、突然大きな変更を強いられました。生徒の皆さんは、2月29日以降の臨時休校以降、学校に登校できなくなりました。期末試験も中止になるという異例の事態となりました。

特に卒業をひかえた高等部3生と中等部3生は、残り少ない友達や先生たちとの最後の学校生活が突然断たれてしまいました。皆さんの健康を第一として配慮した結果とはいえ、とても残念なことでした。

そんな中、高等部卒業証書授与式では、保護者の方々にも皆さんの巣立つ姿を見ていただくことができました。例年とは異なり簡略化した形とはなりましたが、私達教職員は、成長した皆さんの姿を見て、たいへん嬉しく誇らしく思いました。保護者の方々もそう思われたに違いありません。

中等部3年生の皆さんは、義務教育を修了しました。中等部までの教育は義務として受ける教育でした。これから皆さんが受ける高等部での教育は、皆さん1人ひとりの意志で受ける教育です。高等部の3年間は、自分の進路を決定する大事な時間となります。

3年前の春に、皆さんは森村学園中等部に入学してきました。皆さんは3年前のその不安と期待の入り混じった気持ちを覚えているでしょうか。中等部の生活を悔いなく楽しく過ごせたでしょうか。

もし何か悔いがあったとしても、ここで今一度、この3年間を振り返って、次の高等部での目標や自分への期待を定めてほしいです。高等部入学までの時間を、自らの「未来」を思い描くために使ってほしいと思います。卒業は、新たな挑戦のはじまりです。引き続き、一緒に頑張っていきましょう。

高等部3年生の皆さんは、森村学園中等部高等部での6年間の学園生活では、楽しかったこと、苦しかったこと、さまざまな場面を思い出すことができると思います。そんなとき、皆さんの傍(そば)にはいつも友達、先生がいて、そして、ご家族がいらしたことでしょう。皆さんは、6年間の間に、たくましく、人間的にも成長しました。そのような皆さんに、私は大いに敬意を表したいと思います。

4月になれば、皆さんは新たな門出を迎え、大学などに進学して、本当に興味のあることに打ち込むことになります。高校までは、与えられた勉強をこなしていけば、自然と成績も向上したはずです。しかし、これからの「学び」は、自分自身の強い意志と適切な選択によって取り組むものです。「学び」から得られる本当の「学問」の楽しみ、喜びはここからはじまります。そして、その礎(いしずえ)はこれまでの森村での生活によって培(つちか)われたものであることに自信を持ってください。安心して学びの門を叩き、生涯学び続けられる人となって欲しいと思います。

現代は、予測不能な時代などと言われます。グローバル社会の到来で、より複雑で変化の激しい時代に進んでいます。皆さんが社会に出て選んだ仕事がそのまま一生続けられる仕事なのかわかりませんし、会社に入ってもその会社がずっと存続するのかもわからない。

そんな時代であるからこそ、卒業しても、森村学園の建学の精神「独立自営」を常に頭の隅に置いてほしいのです。「独立自営」とは、「人徳を備え、自らの力で人生を切り拓き、世界の力、社会の力となる」、すなわち、「どんな時代であっても自分自身の力で立てる人であれ」ということです。皆さんには、自らの「未来」をいつも考えて、挑戦していって欲しいと思います。

今、日本において最も求められているのは、グローバル社会の舵取りを行うリーダーです。森村学園でしっかりと学んだ皆さんが、いつしか世界のリーダーとして活躍する日が来ることを心から願って止みません。多様な価値観を尊重し合い、奪い合うのではなく、与え合うことができる人になっていただきたいと、心から願っています。これからも、校訓「正直・親切・勤勉」を合言葉に、これからももっと幸せで愛に満ちた人生を過ごして欲しいものです。

森村学園を巣立つ皆さんの未来が、幸福で実り多いものとなるよう、心から願っています。
ご卒業、誠におめでとうございます。

中等部・高等部 校長 江川昭夫

2020年3月18日 (水)

【第11回】 「3月20日卒業証書授与式について」~どうか暖かくして、臨んでください~

今年度の森村学園高等部の卒業証書授与式につきましては、先に配信した通り、時間短縮、規模を縮小して実施することといたしました。

ほとんどの近隣他校が卒業式を中止あるいは生徒のみ参加としている中、森村学園全体としては、幼稚園・初等部・高等部とも、保護者の方々と一緒に巣立つ皆さんを教職員の祝福の中で門出を見届けたい、また保護者の方々に成長したお子様の姿を見ていただきたいという気持ちで決断いたしました。

現在、日本における新型コロナウィルス感染の状況は日々変化をしているとはいえ、まだまだ予断を許さない状況にあります。日本中が不安の日々を過ごしていると思います。

高等部の卒業生の皆さん及びご列席いただく保護者の方々には、先に学園より配信されました「新型コロナウィルス感染拡大予防に係る卒園式・卒業式の対応について」、中高等部から発信されました「学年末の予定―◎3月20日(金)高3卒業式」を最後までお読みいただき、全員が諸注意を厳守して下さい。

会場は窓を開けて換気を行いながら、式が進行します。皆さん、どうか暖かくして、臨んでください。

例年よりも規模縮小とはいえ、心を込めた思い出に残る式典となるよう、尽力いたします。

第102期卒業生の最高の思い出となるよう、ご協力を心よりお願い申し上げます。

2020年3月13日 (金)

【第10回】 「この間、今、皆さんに伝えたいこと(その2)」

2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災から、9年が経ちました。私も14時46分に黙とういたしました。そして、このとき東北の各地で鮮やかな虹が現れて、集まった遺族たちから感激の声があがったとのニュースを後から知り、心が少し暖かくなる思いがいたしました。


9年経った現在、避難指示区域が徐々に縮小され、また3月14日には震災と原発事故で不通になっていたJR常磐線が全面開通するという明るいニュースもありました。しかし、ようやく故郷に戻れる人がいる一方で、減りつつあるとはいえ、まだ約4万8000人もの避難生活者の方がいるとのことです。


皆さんの9年前は、現在の中1でしたら4才、高3でしたら9才くらいだと思います。年齢によって記憶の強さには差があるとは思いますが、当時は関東でも大きな地震が起き、多くの帰宅困難者が生まれました。私も当時の勤務先の学校の生徒たちを無事に帰宅させるまで、生きた心地がしなかったことを鮮烈に覚えています。


生徒の皆さんは毎日忙しく活動しており、日々のことに追われて10年近い前のことは遠い昔のような気持でいるかもしれません。しかし、年に1度のこの時期は、東日本大震災について意識をめぐらす機会でもあります。また、私たちは先々に生まれる人たちに、伝えていく義務もあるはずです。

郷土の先人の方たちは、子孫に地震や津波、洪水、噴火などの自然災害の状況や教訓を伝えるため、災害が起きた土地に文字を刻んだ碑を建てていました。それは自然災害伝承碑(しぜんさいがいでんしょうひ)と呼ばれています。


しかし、時間の経過とともに壊れてしまった碑、忘れられてしまった碑もあると聞きます。これらがきちんと伝承されていれば、あるいは東日本大震災の時に役立ったケースもあったかもしれません。ちなみに現在、国土地理院の「地理院地図」には、昨年の時点で372基の自然災害伝承碑が掲載されているとのことです。テクノロジーが発達した現代では、さらに進化した伝承方法が出てくるかもしれません。

思いがけないことが突然起こるという意味では、今回の新型肺炎も東日本大震災と同じく災害だと言えると思います。しかし、新型肺炎のような未知の病気の流行は、人間の叡智(えいち)と行動いかんで、結果が大きく異なってくる点に、大きな違いがあると私は思います。


現在、世界中の国に患者が出ています。しかし、その後の患者の増加の様子を見ると、各国の違いが見えてきます。


罹患しないための対策として最も有効なのは、手洗いやうがいと言われています。日本においては、もともと風邪をひいたらマスクをする文化、外出後は手を洗ったりうがいをしたりする習慣があったので、すんなり受け入れられています。そうした習慣がいつごろから始まったのかはわかりませんが、一説にはうがいは平安時代からという説もあります。皆さんも、ご家庭で、また幼稚園や小学校で手を洗いましょうと言われて育ってきたかと思います。私たちの身を助けるのは、意外にもこうした小さな習慣であったりするのです。

過去にも、未知の病気が発生したことは多々ありました。古くは天然痘から、ペスト、スペイン風邪、SARS。世界は、そして日本はそれらを乗り越えてきました。

新型肺炎に関しては、先は見えませんし、対処方法にしても正解は後から出てくるかもしれません。ただ、少しでも早く終息しようと、がんばって下さっている方々がいるのは間違いありません。

皆さんは、「正しく恐れる」という言葉を聞いたことがあるでしょう。東日本大震災の時によく使われ、そしてまた最近も使われています。この言葉は、戦前に活躍した、物理学者にして随筆の名手と言われた寺田寅彦の言葉から来ています。ただ、寺田寅彦のもともとの言葉は、「ものをこわがらなさ過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい」であり、現在使われている「正しく恐れる」のニュアンスとは異なるものです。言葉が独り歩きして意味を変えたという一例でしょう。

今言われる「正しく恐れる」とは、より深い正しい情報や知識を知って、状況を理解して、対応するという意味として使われているかと思います。そういう意味で、皆さんにもどうか、未知の災害や病気に対しては正しく恐れ、自分の言動を客観視しつつ、「知性ある行動」をとって欲しいと思います。

森村学園の校訓「正直・親切・勤勉」のもとで日々学んでいる皆さんこそは、「知性ある行動」が可能な若者だと信じてやみません。

校長 江川昭夫

2020年3月 2日 (月)

【第9回】 「家庭学習日期間中の今、皆さんに伝えたいこと」

「家庭学習日期間中の今、皆さんに伝えたいこと」

森村学園中等部高等部の春休みまでのスケジュールを配信しました。新型肺炎感染症拡大防止という観点から、「3学期期末試験」の中止という苦渋の決断を行いました。

学校活動において、試験及び行事はとても大切なものです。しかし、何よりも大切なのは、生徒の皆さん、教職員の健康であることは言うまでもありません。

3学期期末試験は中止となりましたが、終業式、中等部卒業証書授与式、高等部卒業証書授与式につきましては、その意義を維持しつつ、少し規模を縮小して行う予定です。
なお、これは現時点(3月2日)での状況に基づく判断であり、今後の状況によっては、また新たな判断もあることを申し上げておきます。

現在、情報は毎日のように発信されており、中には誤情報が含まれていることもあります。皆さんにお願いしたいのは、テレビやSNSで配信される情報をうのみにすることなく、まずは最新かつ正確な情報を確認していただきたいということです。例えば、厚労省や新聞社の、以下のようなサイトです。


厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

『【随時更新】新型肺炎、今なにをすべきか~正しい情報で正しい行動を』(読売オンライン)

https://www.yomiuri.co.jp/topics/20200129-OYT8T50025/

ご存知の通り、森村学園の教育目標は「どんな状況でも自分で課題を発見し、解決する生徒の育成」です。今回は、これを再確認できる機会だと思って下さい。

生徒の皆さんは、「家庭学習日」によって、友達や先生方と一緒に学ぶ時間を奪われてしまいました。しかしこれは、言葉を変えれば、自分自身で学ばなければならない時間を与えられたということです。工夫して、知恵を絞って、そして担任の先生をはじめとした周囲に相談しつつ、自ら学ぶ力を養って下さい。また、家族の一員として家庭のお手伝いをするなど、有意義に過ごして下さい。


そして何よりも、皆さんの最優先事項は「新型肺炎に感染しない」ことです。そのためにも、手洗い、消毒、マスク、換気、大勢でいる時間の短縮等を常に意識して行動をして下さい。

私達教職員は、早期の終息を祈りつつ、知恵を絞って、この局面を乗り切っていく所存です。どうか保護者の皆様、生徒の皆さん、ご協力をよろしくお願い申し上げます。

休校中のイタリア・ミラノの高校のドミニコ・スキラーチェ校長が、学校のホームページ上で生徒に発信したメッセージが話題になっています。
「休校の今、皆さんに伝えたいこと」
http://ml.asahi.com/p/000004c215/6015/body/pc.html (一部有料会員限定記事)

スキラーチェ校長は、19世紀にペストが流行した様子を描写した国民的文学作品「いいなづけ」を引用しています。また日本では、ノーベル賞作家アルベール・カミュの「ペスト」が各地で在庫切れとのニュースも目にしました。こうした本を読むことは、パニックになりそうなとき、社会の、そして自分の言動を客観視する助けになるでしょう。

スキラーチェ校長の最後の言葉と同じく、私も皆さんを「学校で待っています」。

校長 江川昭夫